はじめに:体は軽くなった。でも、心はどこへ向かう?
早期退職から半年が経った。
うつ病の症状も、ようやく落ち着きを見せ始めた。
薬の量も減り、主治医からも「安定してますね」と言われた。
妻とも笑って話せる日が増え、何より“朝が怖くなくなった”。
そんなある日、ふと開いたニュースアプリに、やたらと目に入ってきた言葉がある。
「FIRE」
Financial Independence, Retire Early──経済的自立と早期退職。
まさに、自分が通ってきた道と重なるようでいて、どこか違う。
「自分はFIREを目指していたんだろうか?」
「リタイアはした。でも、完全に“何もしない人生”がしたかったわけじゃない」
この記事では、そんな「FIREという言葉に出会ったあとの心の動き」と、
これからの人生を模索する中で芽生えた“起業”という選択肢について、今の等身大の気持ちを記していく。
第1章:FIREという言葉が、やけに目につくようになった
退職後、心の余裕が少し戻ってきたことで、スマホでニュースを読む時間が増えた。
SNSでも、ブログでも、なぜか目につくのは「FIRE成功者」の話。
- 「30代で資産5000万円達成し、FIRE達成」
- 「毎日好きなことだけして生きてます」
- 「FIRE後の生活費は月12万円で十分!」
情報としては参考になる。でも、どこか違和感があった
読んでいると「自分もFIREしてるのかな」と思う一方で、どこか違和感もあった。
「自分は“経済的自由”を手に入れるために退職したわけじゃない」
「“働かない”ことが目的じゃない」
「ただ、“組織の中で心をすり減らす日々”をやめたかっただけ」
FIREの世界では「リタイア後はのんびり暮らす」が基本路線らしい。
でも、自分の中にはまだ、どこか“何かしたい”気持ちがある。
第2章:リタイアしたけど、何もしたくないわけじゃない
退職後、3ヶ月くらいは「何もしない」ことが目標だった。
心が壊れていたから、それが唯一の“治療”だった。
でも半年が経った今、ふとこんな思いが出てきた。
「このままずっと、何もせずに過ごしていていいんだろうか?」
確かに、生活費の目処はある。
無理に働かなくても、何年かは暮らせる。
でも、「働かない人生」が果たして“理想”なのかと言われると、どうもピンとこない。
第3章:「会社には戻りたくないけれど、何かはしたい」という矛盾
もう、会社員には戻れない。戻りたくない。
それは、うつ病を経験して痛いほどわかったことだ。
- 組織の論理
- 会議のための会議
- 誰のための仕事かわからないプロジェクト
- 上司の顔色、部下の感情、その板挟み
あの世界に戻ったら、また心が壊れてしまう。
だから、「会社という組織には戻らない」。これは絶対の軸。
でも、それと同時にこうも思う。
「“働く”こと自体が嫌いなわけじゃない」
「むしろ、“誰かの役に立っている”実感が欲しい」
「自分の名前で、何かを生み出してみたい」
第4章:起業という選択肢が、静かに浮かび上がってきた
FIREやセミリタイアの記事を読み漁っていたある日、
とあるブログの一文が目に止まった。
「リタイア後に“自分ビジネス”を立ち上げてみた話」
読むと、元サラリーマンが退職後、趣味の延長でオンライン講座を始めたという。
収入は少ないが、やりがいと手応えを感じているという。
「自分ビジネスか……」
その言葉が、胸にすっと入ってきた。
第5章:「起業=大きな会社を作る」ではない
かつての自分にとって、“起業”という言葉は遠い世界のものだった。
- オフィスを構える
- 社員を雇う
- 資本金が必要
- リスクを背負う覚悟
でも今は違う。
- 自宅でひとりで始める
- 顧客は少なくていい
- SNSやブログを使って発信する
- 最初は利益よりも「誰かの役に立てるか」を大事にする
そんな、“小さな起業”でもいいんじゃないかと思い始めた。
第6章:自分にできることを棚卸ししてみた
ノートを開いて、「自分にできること」を書き出してみた。
- 長年のサラリーマン経験
- エンジニアとしての技術視点
- マネジメントの苦労と工夫
- 早期退職までのプロセス
- うつ病からの回復経験
「もしかしたら、こういう経験が“誰かの役に立つ”ことがあるかもしれない」
・早期退職を考える人向けの相談
・中高年のキャリア再設計の支援
・同じように心を病んだ人との対話
そんなことができたら――
今までの“苦しんだ日々”にも、少し意味があったと思えるかもしれない。
第7章:FIREではなく、“FINE”を目指したい
FIREという言葉は、ある意味で極端だと思う。
完全にリタイアして、労働から解放されて生きる。
それも素晴らしい。
でも、自分が目指したいのはむしろ、「FINE」──
Financial Independence, New Engagement(経済的自立と新しい関わり)
- 組織には戻らない
- 働き方は自分で選ぶ
- 無理なく、心地よい形で社会とつながる
そんな“ゆるやかな働き方”が、自分には合っている気がしている。
おわりに:人生は「第2ラウンド」からが面白いのかもしれない
50代前半。早期退職。うつ病。社会との断絶。
正直、人生の“終わり”に近づいているような気がしたこともあった。
でも今は少しだけ思える。
「ここからが、自分の人生の“第2ラウンド”なんじゃないか」
何をするか、まだはっきりとは決まっていない。
でも、「考えたい」と思えるようになっただけで、大きな一歩だ。
FIREじゃなくていい。
成功じゃなくていい。
ただ、自分らしい“次の生き方”を、丁寧に探していきたい。
※本記事は筆者の実体験に基づいたものであり、医療・投資・ライフプランニングなどの専門的アドバイスを目的としたものではありません。
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