はじめに:自由を手に入れたはずだった
会社を辞めてから3ヶ月。
確かに、時間は自由になった。
誰からも指図されず、自分のペースで毎日を過ごせる。
あのストレスフルな会議も、数字に追われる日々ももうない。
けれど、その“自由”は思ったよりも重たかった。
「もう少し楽になれると思っていた」
「こんなはずじゃなかった」
そんな言葉が、毎朝、頭の中に浮かんでは消える。
この3ヶ月で、私は“退職後の現実”という名の波に何度も飲まれかけた。
第1章:うつ病は、そう簡単には去ってくれなかった
退職を決めた大きな理由のひとつが、うつ状態の悪化だった。
あのまま働き続けていたら、本当に壊れていたと思う。
だからこそ、辞めたことに後悔はない。
…ないはずだった。
「あれ、調子いいかも」と思えた日々
退職後、病院で処方された薬が効いてきたのか、体調は少しずつ回復していた。
- 夜も眠れるようになった
- 食事も普通に取れるようになった
- 散歩に出かける余裕も出てきた
「このまま元気になれたら」と希望を感じていた。
突然、心の底が抜けるような日がくる
けれど、ある朝。
目が覚めた瞬間、体がまったく動かなかった。
頭も働かない。
テレビも音楽も、まるでノイズ。
何かを考えようとしても、霧がかかったように何も浮かばない。
そして、ふらっと、気づけば足が海の方へ向かっていた。
家から歩いて30分ほどの海岸。
ただ、ぼーっと波を見ていた。
「ここで、終わらせた方が楽なんじゃないか」
そんな思いが、ふっと頭をよぎった。
そんな自分がとても怖かった。
第2章:心が沈むタイミングで追い打ちをかけた“お金の現実”
体調の波とともに、現実の「生活コスト」が重くのしかかってきた。
会社を辞めたあとは、社会保険から外れる。
代わりに、自分で健康保険と住民税を払わなければならない。
任意継続と国民健康保険、どっちも高い
健康保険については、会社の保険組合の「任意継続」を選んだ。
理由はシンプルで、国民健康保険よりも数万円安かったからだ。
それでも、年間で約70万円の出費。
月に換算して、約58,000円。
退職して無収入になった状態でのこの金額は、想像以上に重かった。
「収入がないのに、この支出は正直キツイな…」
なんとか貯蓄から出せるが、精神的には大ダメージだった。
住民税の一括請求──前年度収入の“罰金”のようなもの
そして、追い打ちをかけるように届いたのが、住民税の通知書。
前年度の年収ベースで算出されるため、
今年は無職でも、80万円近くを一括で納付しなければならなかった。
わかっていた。
早期退職の先輩方のブログにもそう書いてあった。
でも、実際に振り込むときのあの虚無感は、想像を超えていた。
第3章:貯金は減っていく。心も削れていく。
退職後、月の支出はざっと20万円前後。
そこに健康保険、住民税を合わせると、最初の3ヶ月で一気に150万円近くが消えた。
預金残高が、目に見えて減っていく。
「このペースで減っていったら、あと何年持つんだろう」
「このまま何もできずに、貯金だけが減っていったら…」
心のざわつきが、また睡眠を奪う。
薬の量が少し増えた。
散歩に出る頻度も減った。
第4章:ある日の出来事──心の声が限界を告げる
ある日、妻に頼まれていた不用品の回収依頼をしようと電話をかけるが、
たったそれだけのことができない。
手が震える。
声が出ない。
受話器を持ったまま、じっと座り込んでしまった。
「なんでこんなことで…?」
わからない。でも、できなかった。
その夜、妻に言われた。
「もう、我慢しなくていいよ」
「元気にならなくてもいい。あなたが生きてるだけでいいんだよ」
初めて、声をあげて泣いた。
第5章:少しずつ「受け入れる」ことから始めた
それからは、無理をしないと決めた。
- 毎日何かやろうとしなくていい
- 頑張らなくていい
- 人と比べなくていい
その代わり、「今日は天気がいいな」と思えた日は、散歩に出る。
「この曲、懐かしいな」と思えたら、少しだけ聞いてみる。
そんな“小さな肯定”を、少しずつ自分に許すようにした。
おわりに:「自由」の中にある現実と向き合うということ
早期退職後の3ヶ月。
それは、会社員時代とはまるで違う“静かな戦場”だった。
- 心のアップダウン
- 金銭的な不安
- 社会とのつながりの喪失
確かに、自由は手に入った。
でも同時に、「自分を見つめる責任」も生まれた。
「本当にこれで良かったのか?」
そう自問する日々は、今も続いている。
でも少しずつ、その問いに答えなくてもいいと思えるようになってきた。
焦らなくていい。
ゆっくり、自分のペースで、自分の生き方を見つけていけばいい。
あなたに伝えたいこと
もし今、同じように早期退職のあとで悩んでいる人がいたら、伝えたい。
- うつ病は「治るもの」ではなく、「つきあうもの」かもしれません
- 税金や保険料は確かに重い。でも、それで人生が終わるわけじゃない
- 誰にも必要とされていないように思える日でも、あなたの存在は大切です
大丈夫、ひとりじゃない。
※本記事は筆者の実体験に基づいたものであり、医療・投資・ライフプランニングなどの専門的アドバイスを目的としたものではありません。
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