はじめに
キャリアコンサルタント養成講座に通い始めて数週間が経過した。退職後8ヶ月が経ち、少しずつ「次の人生」に向き合えるようになった今、私はこの講座の中で、思いがけない“自分との出会い直し”を経験している。
FINE=Financial Independence, New Engagement。自由と関わりの両立を目指すこの生き方において、「他者とどう関わるか」だけでなく、「自分とどう向き合うか」も重要なテーマだったのだと気づいた。
ロールプレイで気づいた“傾聴の本質”
講座の中で、最も印象的だったのがロールプレイ演習だった。
キャリアコンサルティングの現場を模した実践演習で、クライエント役とコンサルタント役に分かれて会話を交わす。
ある日の演習で、私はコンサルタント役を担当した。相手は、子育て後に仕事復帰を目指す女性という設定。
最初は、「共感的に受け止めよう」「相手の悩みを整理しよう」と意識していたが、気づけば私は「では、どうしたいと思っているのですか?」と問い詰めるような口調になっていた。
フィードバックで指摘されたのは、
「相手の話を“聴いているようで、聴いていない”」
ということだった。
胸に刺さった。まさにその通りだった。
私は相手の言葉に寄り添うよりも、“答えを導くこと”に意識が向いていたのだ。 それは、長年マネジメント職として「決断と指示」に慣れていた名残だった。
自分の“癖”を自覚するという学び
この演習の後、自分の中で大きな変化が起こった。
それまでは、「人の話を聴くのは得意だ」とどこかで思っていた。部下との面談でも、「親身に話を聴いてくれる上司」と言われることが多かった。
けれど、それは“管理職としての聴き方”であって、キャリアコンサルタントとしての“聴き方”とは根本的に異なることを痛感した。
- 答えを急がない
- 沈黙を怖れない
- 相手の内側にある想いに気づこうとする
この「聴く姿勢」は、私にとって“新しい筋トレ”のようなものだった。
正直、難しかった。
けれど、繰り返しロールプレイを重ねる中で、徐々に少しずつ、「話を聴くことは、相手を信じることなんだ」と思えるようになっていった。
自分の内面に向き合う時間
もうひとつ、大きな気づきがあった。それは、この講座が“自分自身のキャリア”を問い直す時間にもなっているということだ。
ロールプレイの中で話を聴いてもらったとき、自然と涙が出そうになった瞬間があった。
それは、「退職後、孤独だった時間」を話しているときだった。
「自分で選んだはずなのに、誰にも相談できずに不安だった」
その言葉に、自分でも驚いた。
こんなふうに、じっくりと自分の気持ちを言葉にする機会がなかったのだ。
キャリアコンサルタント養成講座は、スキルを学ぶ場であると同時に、自分の人生を見つめ直す“内省の場”でもあるのだと実感している。
会社の外にある“関係性”の価値
講座を通じて得た人間関係も、私にとって大きな財産になっている。
会社員時代のように、役職や部署に縛られた関係性ではなく、
- 介護を経験した主婦
- セカンドキャリアを模索する元営業職
- 学校現場で苦しんできた元教員
といった、背景も価値観も異なる人たちと、“学び合う仲間”として関われる。
誰かの話を「評価せずに聴く」こと。 自分の話を「否定されずに受け止めてもらう」こと。
そんな経験が、FINEの“New Engagement=新しい関わり方”を、私の中で少しずつリアルなものにしている。
おわりに:FINEは、他者と関わる中で磨かれていく
早期退職して、最初は「自分ひとりでどうにかしよう」と思っていた。 でも今は違う。人と関わることで、自分が少しずつ変化していくことを実感している。
FINEとは、“自由で孤独”な生き方ではなく、
自分の経験や感情を誰かに差し出し、誰かの声を受け取る。
そんな、“やわらかなつながり”の中で生まれる豊かさなのだと、今の私は思っている。
※本記事は筆者の実体験に基づいたものであり、医療・投資・ライフプランニングなどの専門的アドバイスを目的としたものではありません。

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